【映画備忘】人類を救うため宇宙の最果てへ
先日、クリストファー・ノーラン監督の「インターステラー」をようやく見た。
率直な感想としては、ここまで作り込まれた映画にはなかなか出会えない。
上映時間は、2時間49分となかなかの大作。
しかし、話の展開にずっと画面から目が離せなかった。
あらすじをざっとまとめると、
地球環境が変化し、世界的な食糧飢餓に陥る中、人類を救うために代替居住可能な惑星を探そうと、マシュー・マコノヒー演じる、元宇宙飛行士の農家の男性が宇宙の旅に繰り出すというストーリー。
量子物理学や相対性理論の知識があれば、より楽しめると思うが、文系の私でも壮大な世界観と、その中にあるヒューマンストーリーにしかと引き込まれた。
7年前の映画だが、宇宙開発競争が世界的に激化し、人類が火星に住む未来も検討されている、まさに「今」の時代にも通ずる物語だと思った。
ところで、映画の中で人類を救うために、2通りの計画が用意された。
◆PlanA:人類が居住することができる代替惑星を見つけ、地球上の人間を移住させる
◆PlanB:Aの移住が難しかった場合、冷凍した受精卵を生存可能な惑星に持っていき、
人類という種だけでも保存する
Bについては、自分が地球に残される人類の一人だと考えるとかなり怖いが、なるほど面白い発想だなと思っていたところ、その直後にこれと関連するニュースを見つけた。
高度400kmにある国際宇宙ステーション(ISS)で6年間保管した、フリーズドライのネズミの精子を地球に持ち帰り、受精させたところ、無事健康なネズミが生まれたとのニュースだ。
そもそも宇宙空間では、地球上とは比較にならない量の宇宙放射線を浴びる。
このようなことから、現在ISSに滞在する宇宙飛行士も、滞在は約半年ごとに交代している。
実験の経緯や方法についてはJAXAのHPで詳細に紹介されている👇
人類はどの程度長く、宇宙空間に滞在することができるのか。
また、宇宙空間で子孫を残すことは可能なのか。
これを調べるために、行われた今回の実験。実際の哺乳類をISSで飼育して長期に渡り調べるのは難しいため、フリーズドライのネズミの精子で行われたようだが、冷凍していても精子や細胞は宇宙放射線の影響を受けるため、容易に調査する方法として採用されたそうだ。
PlanBではないが、月に基地をアメリカの作る「アルテミス計画」が本格化したり、宇宙旅行も目前に迫る中、その影響を知ることは喫緊の課題。
そもそもISSまでは地球からたった400kmだが、月までは約38万km(アームストロングを乗せたアポロ11号では、月まで4日と6時間かかった)、さらに人類が次に目指す火星までは約5500万km(今の技術だと約8ヶ月かかる)もかかる。
(参考→ 人が乗ったロケットは宇宙のどの辺まで行ったことがあるんですか?│ロケット│宇宙科学研究所キッズサイト「ウチューンズ」 )
今回の結果から、哺乳類が宇宙に長期滞在しても放射線による生殖への影響は大きくないということが分かったことはかなり大きな成果だと思うが、何より、なかなか壮大な実験がすでにここまで進んでいるのかということに驚いた。
参考までに、この実験についてアメリカの科学誌「サイエンス・アドバンシズ」で紹介された論文を読むと、この実験結果から、宇宙では精子を200年以上も保存することが可能らしい。
【映画の基本情報】
タイトル:「インターステラー」
監督:「インセプション」でもおなじみ、クリストファー・ノーラン監督
公開年:2014年
上映時間:2時間49分